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↑紹介する「チャイカ」は、コウモリのような翼があります。
類似しているということで悪魔のQちゃんの写真を貼っておきます。

今日は、「水色の髪のチャイカ」をご紹介。
昨日に続いて、山本弘先生の作品です。

「百鬼夜翔」という共通の世界観をベースに作られており、ご紹介する作品も、短編集の中の一作になります(同じ文庫の中に他二作ありますが、別の作者の作品になります)。
作品群の一作ですが、「水色の髪のチャイカ」だけでも、ちゃんと物語は理解出来ます。

「百鬼夜翔 水色の髪のチャイカ―シェアード・ワールド・ノベルズ (角川スニーカー文庫) (日本語)」
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チャイカ
残念ながら、Amazonにも古本しかありません。
電子書籍も出ていないようです。

 まず、世界観を説明します。
この世界には、妖怪がいます。
妖怪(それ以外の不思議なモノも)は、人が「居る」と強く思ったことで、この世に生(せい)を受けて生(う)まれてしまいます。
 同然ながら、昔からの伝承は信じる人も多いので、妖怪が生まれやすいです。
カッパや天狗など、だれでも知ってるモノは、それだけ生を受けやすい訳です。

「水色の髪のチャイカ」では、ツクモガミがメインになります。
人の思いを強く受けたことで、ツクモガミとなり、ドールが生をうけてしまうのです。
※ドーラーのみなさん、興味が出てきたでしょ?

主人公の「チャイカ」は、27㎝のドールで、「機装妖精チャイカ」という漫画の主人公を、作者が自ら手作りでドール化したものです。
漫画の中の「チャイカ」は27㎝しかない(つまり作者のドールは等身大)未来から来たドール型の戦闘マシンなのですが、警護対象である少女「あゆむ」と友情を育んだことで、心を持ち、自分を作った組織と戦うことになります。
その「チャイカ」のドールが、作者の思いの強さによって、ツクモガミになり、心を持って動きだしてしまうのです。
しかも、作者の強い思いを受けているので、ツクモガミになっても、物語の中から抜け出てきたような存在で、性格や記憶も漫画のまま、全身の兵器もそのまま使える状態で、生を受けてます。
「あゆむ」を守ることを自分の存在のすべてとしている「チャイカ」は、「あゆむ」の居ない現実世界に、驚き絶望します。
そして、自分と「あゆむ」を物語として生み出した作者を恨んだりもします。

そんな中、ドールを愛する者たちが、何者かに殺される連続殺人が起きます。
実は、この殺人者もドールがツクモガミになったモノでした。
正体は、十九世紀の中頃にドイツで作られた精巧な等身大ドール「ブリギッテ」。
 「ブリギッテ」は、人間の女の代わりに理想の相手として作られたドールです。
つまりはラブドール。
しかも、こちらも作者の強い思いを受けてツクモガミ化しているのです。
ただし、凶暴化しています。
自分を勝手に作って勝手に愛した製作者を強く憎んでいます。
願いが叶って、製作者を殺し、自分も破損し死んだことがあるのですが、今回も含め人形愛好家によって修復され、蘇ってしまっています。
「復活しないためには、人形愛好家を全員殺すしかない」と考えています。

これ、今回読み返すまで、すっかり忘れてました。
ドーラーになってから読み返すと複雑な気分です。
ラブドールの意思確認は無理なので、もしかしたら自分も嫌がるドールを無理矢理している?
と、思ってしまいます。

ですが安心を。
「ブリギッテ」もツクモガミになるには製作者の強い思いが必要だったはずなので、理想の女を造りながら「俺と愛し合うのが死ぬほどいやな女」と設定しないかぎり、こんなことにはならないはずです。
そんなドーラーさん、居ないですよね?
心当たりある方だけは、ご注意を。

「あゆむ」の居ない世界に絶望している「チャイカ」ですが、作者である(自分のドールの製作者てもある)坂城と話し合い、ある結論に達します。

今回、この記事のために再読しましたが、目が千切れそうなほど泣きましたよ。
物語を作ったことがある人、ドールを造ったことがある人。
そんな人には、どストライクな話のはずです。

文庫の口絵には、山本先生が自ら造った「チャイカ」のドールの写真が載ってます。

多少、等身大ラブドールの扱いに不満もありますが、素晴らしい作品であることは間違いありませんので、強くお勧めします。